ソフトウェアの価値は4つに分類できる

IT系の会社の採用面接でビジネスモデルや今後の事業展開について質問をしたいのであれば、直接的な質問をするよりも、
「御社では、ソフトウェアの価値をどのように測っていますか(考えていますか)?」
という質問をするとよいと思います。即答できる面接官は少ないと思いますが、このネタで会話をするとその会社がどういった戦略でソフトウェアビジネスを展開しているのか大体分かります。

ソフトウェアの価値をどう測るべきかというのは、なかなか答えが出ないテーマです。

価値の測定基準というのは、様々な意思決定(ある要件を取り込むべきか否かの判断から、エンジニアの給与の評価まで)に幅広く影響を与えるものなので、結果としてソフトウェアビジネスの構造を決める重要な要素となります。なので、採用面接でも必ず聞いた方がよい質問だ、というわけです。

ソフトウェアの価値基準は大きく以下の4つに分類できると思います。この価値基準で業界のいろんなことが説明しやすく、理解しやすくなるので個人的には重宝しています。

顧客価値
定量的には測定しづらい。ソフトウェアの利用により生まれる社会における価値
営業価値
会計上、売上として現れる定量的な価値
製造価値
定量的には測定しづらい。ソフトウェアの工業的な規模を表す価値
原価価値
会計上、原価として現れる定量的な価値

例えば、ソフトウェアの生産性について議論が行われますが、それは製造価値をどのように計測して原価あたりの製造価値を増やす方策を考えるかということです。ソフトウェアは製造価値を計測するのが他の工業製品に比べて難しいため、かのマーティン・ファウラーも「ソフトウェアの生産性は計測不可能」と諦めてしまうほどです。しかしながら、ファンクションポイント法は製造価値基準の指標の一種だと言えるかと思います。

またSI業界は、この原価価値と営業価値に焦点をおいて人月ビジネスをしていると言えるでしょう。すべてが定量的な点がメリットではありますが、顧客価値、製造価値にあまり重点が置かれなくなってしまうのは、業界の問題点をそのまま表してるといっていいと思います。

私が大切にしたいソフトウェアの価値は、この物差しでいうと、「顧客価値」と「製造価値」の2つです。
「顧客価値」が「営業価値」を大きく上回っている時、お客さまはその製品を素晴らしい製品だと思いますし、
「製造価値」が「原価価値」を大きく上回っている時、経営層はエンジニアチームのパフォーマンスを評価するのだと思います。

これらの価値を最大化するための、製品デザイン、開発プロセス、エンジニアチームを作り上げるが自分のミッションだと思って仕事をしています。